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昔このサイトにのっていた独り言です。恥ずかしくて消したのですが、今読んでみるとちょっとおもしろいので、ちょっと書き換えて復活。

テーマは俗語の発音。一般的には「汚い言葉使い」といわれるものです。私自身男子校出身なのでこういう言葉使いをすることが多かったのですが、白い目で見られたこともあります。でも、これを分析することによって、日本語の音節の特性がよくわかります。だから、言語学的にはいかに"汚い"言葉の分析も有用であるっていう良い証明になります。

まずは用語の復習。Syllableっていうのは母音が中心となって、左右に子音がくっつきます。左がわにつく子音をOnset、右側にくっつく子音をCodaとよびます。"汚い"言葉使いを分析しながら日本語における、Syllableの特性を考えてみましょう。さて、下の例をご覧になってください。

1.食べるから=>食べっから
2.食べるだろ => 食べんだろ
3.食べるんだから=> 食べんだから

左側の「る」の音に注目。1では「っ」に2では「ん」に変わっていて、3ではまったく消えてる。 どうしてこういう3パターンが出てくるのでしょう?まず、1番から考えてみましょう。ローマ字 で表すと変化がよく分かるはず。

[taberukara] => [tabekkara]

まず、左側にあった[u]は完全に消えてますよね。だからこれが消えてるってのが、上の変化の元凶でしょう。でも、なんで、[r]は[k]に変わるのでしょうか?では、まず、[u]が消えた状況ってのを考えて見ましょうね。[taberkara]ってなります。これをSyllableに切ろうとすると、("."はSyllableの切れ目を表します。)

[ta. ber. ka. ra]

ってなる。大事なのは、[r]がCodaに入るってことです。ところが、人間Codaが嫌い。日本語もCodaの存在自体は許すけれども、Codaにこられる子音には強い制限をかけます。それがCoda Conditionとよばれるもので、言語学ではとっても大事な概念です(でした)。乱暴を承知で言うと、Coda Conditionは「Codaは来てもいいから、そのときは次の子音と同じ形でいてね」って頼む。つまり、[r]さんは[k]さんと同じ音に変化してしまうわけです。まとめると、

[ta.be.ru.ka.ra]= > [ta. ber. ka. ra] => [ta.bek.ka.ra]

っていう過程を経て1の変化が出来てることになる(=こういった変化の過程をDerivationと言う。)。

じゃあ、次に2考えてみます。同じように[ru]の[u]がなんかの理由で落っこちる。ここで,迷子になるのが[r]ちゃん。Coda Conditionが要求するように、て隣りの子音[d]に,[r]は次の音[d]に同化したい。ところが実際は同化してない(一部の人には、[tabeddaro]っていう発音も可能といえば、可能だけど、[tabendaro]の方が一般的)?なんで?なんで、[n]なんて音が入ってくるのでしょう?

日本語限らず、人間言語では[...dd...]ってのはすごく嫌われます。発音しにくいんだね(詳しくは、Voiced obstruentの欄を参照)。[tabeddaro]だと、[...dd...]っていう連鎖が出てきてしまうんで、[n]をいれてこれを回避する。ちなみに、[n]は後ろに続く[d]とすごく似た音なので、coda conditionはOKなのです(専門的にやろうとするとむずかしいのでいまはこれで勘弁)

ちょっと話しずれるけど、まったく同じ現象が赤ちゃん言葉でみうけられるんです。(Templatic morphologyの欄を参照。)

おきる => おっき
たつ => たっち
おぶる => おんぶ *おっぶ 

「おきる」は「おっき」って小さい「つ」が入ってるのに、「おぶる」では「おんぶ」っていう風に「ん」が入ってきている。つまるところ、[obbu]にしたんでは、[...bb...]っていう音の連鎖が出てきてしまうってのが、嫌なんでしょう。2で学んだことをまとめます。「日本語は[...dd...]とかって連鎖が嫌い。それは赤ちゃん言葉でも、"汚い"言葉でもいっしょ。

最後に3を考えます。まず、3から[u]を消してみると…

[ta. be. run. da. ka. ra] => [ta. be. rnda. ka. ra.]

子音が三つ並んで[rnd]ってなってますよね。日本語ではSyllableひとつにつき、母音の周りに子音前後に最大一個しかつけない。つまり、Onset1個と、Coda1個が最大。だから、子音が3つ並んでしまうと、syllableに収まらないわけです。よって、[r]くんは消えてしまう。だから「る」は結局全部消えてしまう。はい、ここで分かる日本語の性質「syllable一個につき、左右子音一つづつしか納まらない」。

さらにです、syllableにおさまらないと消えるっていうのは、Prosodic Licensing っていうこれまたとっても大事な概念です。Syllableに入れない子音は死になさい、と。

まとめ。男子高校生の使ってるような言葉にも、日本語の音韻体系を反映されており、言語学的にも価値があるものだ。言語学の楽しみって、こういう日常のものに発見を見出せるところが大きいのです。
雑音の一種。全ての周波数の音が、同じ強さで混ざると、「じゃー」といったかんじの雑音が生まれる。テレビの画面がうつってないとき(砂嵐状態のとき)に聞こえる雑音がこれにちかかったんじゃなかったかな。とにかく、これをwhite noiseという。確か全ての周波数の光をまぜると、白色の光がうまれることからこの名がついたとか。
音をじょじょに(デクレシェンドで)終わらせるようにすること。実際の発話では、音はだいたいじょじょに終わるものなのだが、実験の現場では音声の合成などをするときには、そうも行かないので、windowingをかけてあげることで自然発話に近づけてあげる。

二つのものの大きさの違いは、同じ大きさの違いでも、そのもの自体の大きさが大きいほど分かりにくくなる、という法則。例えば、1秒と2秒ではだいぶ違う気がするが、1分と1分1秒ではほとんど違いがなくかんじる(差はどちらも1秒なのに)。音の長さに関しても同じことがいえ、短いものを二つ比べるのは比較的簡単なのに対して、長いもの二つを比べるのは結構難しい。

二つ以上の母音が子音を超えて、似たようなものになってしまう現象。人間言語ではとてもよくある現象の一つ。これに対して、子音同士が母音を超えて、似たもの同志になることはすくない。これはCV-asymmetryといわれ、音の学問のなかでおもしろいパズル。

もっとも私が好きな理論は、こういうもの。発音上、子音の挟まれていようがなんだろうが、母音と母音はくっついている。しかし、子音と子音は母音が間に入ると、発音上はくっついていない。これは、実験によって証明されている。つまり、母音と母音が子音を挟んで影響し合えるのは、結局発音上は接しているから。

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